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登記における住所変更の省略の可否

コラム 不動産登記 商業登記

法律事務を取扱いにあたり、物事を「特定」することは非常に重要なことです。

人物を特定する情報として「住所」は極めて重要な情報です。
しかし、住所は時に、引っ越し等の事情により、変更があるのが通常です。

さて、登記については、変更があれば忠実に登記に反映させる、ということが基本的な取り扱いです。
もちろんこの住所の変更も、基本的には、変更に忠実にして登記に反映させるべきものです。

しかし、まぁ、言っても住所ですから、ということで、登記においては、例外的に色々簡便な扱いが認められている場合があります。

例えば、抵当権を抹消する場面で、抵当権者が住所や氏名(法人の場合は本店や商号)が登記上のものから変わっていた場合。
どうせ抹消する登記なのだから、住所等の変更を登記上に反省させることが無駄といえば無駄です。
ですから、このような場合、抵当権者の住所等の変更を省略して抹消の登記をすることが認められています。

ですが、合併などが原因で登記上の住所や商号が変わっている場合。
この場合は、変更があったのではなく権利の移転がありますので、省略することができず、権利を移転してから抹消する必要があります。

また、同じことを所有権で考えた場合、売買を前提等した売り主側の住所等の変更を省略できるかということですが、売却するから権利がなくなるので、住所の変更は無駄でしょう、なんて考えると大間違いです。
所有権は、不動産登記制度の中心的な権利ですので、所有権を失う、ということに対して、厳格な手続きが求められます。
ですので、所有権の移転を前提とする場合は、前提として例外的な簡便な取り扱い(住所の変更の省略)は認められておらず、原則に則り、住所の変更を登記してから、所有権の移転の手続きをする必要があります。
この住所変更の登記を忘れて飛ばしてしまうと、登記全体が却下になります。
司法書士としては非常に怖いことです。

一度、別のテーマで記事にしたことがあるのですが、商業登記の場面ではどうでしょう。

代表取締役が重任時に、登記上の住所の変更があった場合、重任登記の前提として住所の変更が必要でしょうか。
この場合、変更を要せず、いきなり変更後の住所で重任登記を入れることができます。

では、代表取締役が辞任する場合、登記上の住所の変更があった場合、辞任登記の前提して住所の変更が必要でしょうか。
先ほどの不動産登記の抵当権抹消の登記の例から考えると、もう抹消する登記なのだから、と不要と判断してしまいそうです。
しかし、この商業登記のこの例の場合は、前提として住所変更の登記が必要となります。
ただし、辞任を証明する辞任届には住所を記載する必要がなく、住所の変更があっても審査書類上には表示されませんので、実務上、商業登記の役員の辞任の前提で、住所変更の登記をすることは、ほとんどありません。
司法書士が辞任届を作成する場合、このような事情から、住所の記載をしないような辞任届を作成します。
会社所定の辞任届に変更後の住所が表示され、再徴求が難しい場合は、住所の変更を省略できません。

住所変更の1つとっても、不動産登記、商業登記で扱いが異なりますし、それぞれの分野内でも手続により取り扱いが結構異なります。
実務家としても注意が必要な部分です。

住所等の変更は、不動産登記では、登記名義人表示変更といい、司法書士は、「名変」と省略して呼称します。
上記に述べましたが、所有権移転の場面で、省略できない名変の登記を忘れて飛ばしてしまうと登記全体が却下になってしまうことを考えると、実務上、非常に重要な登記といえます。
司法書士業界の用語ではありますが、「たかが名変、されど名変」と言われる所以(ゆえん)ですね。

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