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配偶者居住権は2つの遺贈で~前編~

コラム 相続

さて、2019年1月から2020年7月にかけて段階的に施行されました相続法の改正に伴い「配偶者居住権」(ここでは短期居住権は含まない)が新設されました。
遺産分割の内容として設定することもできますし、遺言の内容として設定することもできます。

まずは条文を引用します。

(配偶者居住権)
第1028条
被相続人の配偶者(以下この章において単に「配偶者」という。)は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の全部について無償で使用及び収益をする権利(以下この章において「配偶者居住権」という。)を取得する。ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。
一 遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。
二 配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき。
2 居住建物が配偶者の財産に属することとなった場合であっても、他の者がその共有持分を有するときは、配偶者居住権は、消滅しない。
3 第903条第4項の規定は、配偶者居住権の遺贈について準用する。

同条第1項第2号に注目しますと、
(遺言で設定する場合は)「遺贈」として設定しなさいよ!!
と規定されています。
そもそも遺贈とは、遺言で、その相続開始時に贈与することですので、「遺贈」として記載があるということは、遺言の内容として設定する場合ということになります。

条文に「遺贈」と規定されている以上、配偶者居住権を設定する場合は、これを遺贈の目的として設定しなさい、これ以外は駄目ですよ、ということになります。
なぜかというと・・・、配偶者居住権を受け取る側が拒否できるように、という配慮がなされています。
もし、これが遺贈ではなく、相続の対象にされている場合を考えると、配偶者居住権を受け取る側がこれを不要と考えても、これを拒否するには相続放棄しか選択肢がなくなってしまい、他の財産まで受け取れなくなってしまう、ことがないように配慮されているのです。
この点、遺贈の対象であれば、「これは要らない」といって、特定の遺贈の対象物について、これを受け取る側で個別に拒否することができます。

立法上、配偶者居住権を遺贈に特定されている以上、遺言としては遺贈する内容でなければ配偶者居住権を設定できないということになりますが、仮に遺言を公正証書で作成した場合などは、専門家がこれを確認することになりますので、配偶者居住権を設定について、必ず遺贈の対象物として遺言の内容に盛り込まれるところ、もし、自筆遺言で、「配偶者に配偶者居住権へ相続させる」と記載された遺言が作成された場合、どうなるのでしょう??

当職の見解としては、文言として「相続させる」と記載されていても、配偶者居住権を定めている以上、これを「遺贈」として残す趣旨であったと解釈して、配偶者居住権の設定を容認する方向で解釈されるのではないかと思っています。
(→【令和3年4月追記】令和3年4月時点の運用で、当職の本コラム当時の解釈のとおり運用されることになりました。詳しくは、「遺言で配偶者居住権を「遺贈」ではなく「相続させる」旨の記載がある場合」の記事をご参照ください。)

判例でも、相続人以外の方に「相続させる」と記載された遺言が、これを「遺贈」の趣旨であったと解釈すべき、として、遺贈として承継させる効力を認めている判例がありますので、これに準じた判断がなされるように思っています。
これから期間をかけて事例が積み重なっていくので、現時点での、当職の見解にすぎませんが。。

さて、表題では、「配偶者居住権は2つの遺贈で」となっておりますが、今回、上記は、法令にて配偶者居住権の設定には、遺贈でないと効力が発せしませんよ、という効力が発生する法律上の要件について、記事に致しました。
1つ目の遺贈となります。

では、表題でいく2つ目の遺贈とは・・・
次回は、
配偶者居住権は2つの遺贈で~後編~
でこの「2つ目の遺贈」について記事にしたいと思います。

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