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一連の申請内で印鑑証明書を住所証明書としても利用する裏技~後編~

コラム 不動産登記

さて、前回の記事の
一連の申請内で印鑑証明書を住所証明書としても利用する裏技~前編~
では、不動産登記において、根拠条文の異なる添付書類は、前件添付や後件添付の扱いができないので、これに倣えば同じ書類を使い回しできない、というお話を致しました。

さて裏技です。

といっても、自らの補正体験から認識に至ったという、恥ずかしい知識です。
もう5,6年前の話です。

ある日、法務局から電話が。

法務局「補正してください。申請内で、利益相反に関する議事録に付けている印鑑証明書と所有権の意思確認の印鑑証明書は、兼ねることができません。」

私「今日たまたまそちらに行くので、対応します。」

法務局「申請印だけ持ってきてください。」

私「はい。それでは後ほど。」

???
印鑑を持っていけばいいの?
同じ印鑑証明書をもう1通持っていくのではなく???

実は、別の議論になりますが、法務局のローカルルールというものが存在します。
A法務局ではOKなのにB法務局ではダメ、みたいな。
同じ不動産登記法を運用しているのに、解釈が異なるのですね。

これまた別の議論ですが、不動産登記では、法人やその役員同士の取引で利益が相反する場合(例えば法人の不動産を代表取締役に売る等)は、その法人の決議を要し、その議事録を印鑑証明書付で添付する必要があります。
これとは別に、所有権移転登記では、売主が印鑑証明書を添付する必要があるところ、これらの印鑑証明書を1通で兼ねることができるか否か、という議論があります。

原則としては、根拠が異なるので1つの印鑑証明書ではダメ、ということなのですが、ローカルルールで、住所証明としての印鑑証明書と、売主の印鑑証明書の併用は絶対ダメだけど、議事録の印鑑証明書と売主の印鑑証明書はOKという法務局もあります。
また、議事録に付けるの印鑑証明書について、承諾書に添付する印鑑証明書の例に倣い原本還付できない、とする法務局もあれば、原本還付できちゃう法務局もあります。
これらもローカルルールで法務局により取り扱いが異なる場合があります。

このような色々な問題がありましたので、印鑑証明書を複数頂いていたのですが、同じ法人からの別事件にできれば使用したかったので、ひとまず1通だけを添付して登記申請をしました。

そしたら補正の電話です。
それにしても、印鑑証明書を用意して欲しいということではなく、申請印を持ってきて欲しいとは、不可解な。

法務局に行くと、親切なことに補正の準備をしてくれていて、

法務局「先生、ここハンコ。」

私「はいはい。(ハンコをポン!)」

見てみると議事録には印鑑証明書のコピーが用紙されており、これに原本還付の扱いをする印鑑を求められました。

要は、その法務局は、印鑑証明書の併用は認めない、議事録の印鑑証明書は還付を認める、という対応でした。
そして、議事録の印鑑証明書は原本を還付している、そして売主のものとして原本がついているが、これらは法律上、同一のものではない、ということなのでしょう。

補正だけの特別な対応かな、と思っていましたが、調べてみると、どうもそうでもないらしい。

最近、1件目に相続登記、2件目に売買、の事例で、1件目で相続したAさんが2件目でBさん売却して所有権移転をするといった登記で、なんと、Aさんの住民票の徴求が漏れていた(恥ずかしい)、という事例で、時限的にシビアではなかったので、この経験を思い出し、補正覚悟で、1件目のAさんの住所証明書として印鑑証明書の写しを原本還付扱いで添付し、2件目にその印鑑証明書の原本を添付して申請したところ、無事、連絡もなく登記が完了しました。

このように根拠条文が異なる場合に、同一の書類1通を、前件添付や後件添付でできない運用を、原本還付を利用して、事実上、これを可能にすることができます。

ただし、ローカルルールにご注意を。
この運用を認めない法務局もあるかと思いますので、時限的にシビアな案件については、原則通り、同じ書類でも根拠法の数だけキッチリ書類を徴求しましょう。

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