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本当にあった成年後見人の取消権行使~その1~

コラム 成年後見

さて、前回の記事、
本当にあった成年後見人の取消権行使~序章~
の続きです。

前回、後見人に与えられている取消権がどのようなものか話を致しました。

それでは、実際に私が成年後見人として取消権を行使した「事例1」をご紹介いたします。

成年被後見人Aさんは、知的障害があり、後見開始の申立てがされ、私が成年後見人として選任されました。
Aさんは、賃貸マンションに独居し、障がい者支援施設に通所しながら、生活を営んでおります。

んん??成年被後見人が一人暮らし?
と思われた方もおられるのではないでしょうか。
我々実務家は、成年被後見人が独居、と言われても、普通に感じます。
成年後見人と言いましても、ある程度の幅があり、老人施設等で寝たきりの方や、意思疎通できない方もおられますが、普通に意思疎通できる方もおられます。
そう、元気に独居されている方もおられるのです!

被後見人の中には、まったく私の顔を憶えていない方から、顔は憶えているけど名前を覚えていない方、そして顔も名前もばっちり覚えている方もおられます。

Aさんは、元気に独居されてます。
何か困ったことがあったら、私に電話をかけて知らせてくれることもできます。

ある日のこと。
事務所の電話が鳴ります。
電話番号を登録しているので、Aさんからの電話だとわかります。
いつも電話では、名前は名乗らずに、いきなり要件から入るAさんです。

「あのね、あのね、」
いつも通りの電話が始まります。
用件を聞くと、どうやら誰か知らない人が家に来て、渡された紙に名前を書いてその人に渡した、ということらしいのです。
それが何かはわからないですが、何かの契約をしたことは認識しているようです。
早く帰ってほしいから、言われるままに署名をしたようです。
署名をした紙の控えがあるらしく、電話番号が書いていないか聞いたところ、書いてあるとのことなので、その電話番号を聞き、あとはこちらで対処する旨を話して電話を切りました。

とりあえずその相手方の電話番号に電話してみました。
・・・新聞の定期購読の契約でした。
事情を話しましたら、家に行った契約を行った担当の本人が電話に代わったので、Aさんは成年後見制度を利用しており、後見人である私がその契約を取り消す旨を話し、必要であれば書面通知する旨を話しました。

すると、わかりました、といって、電話のみですんなりと契約は白紙になりました。
訪問での契約をお仕事にしておられるので、特定商取引法等の特別法による取消や後見制度の知識があったのかもしれません。
その担当は、どうもAさんが理事を弁識する能力が低いことを認識しつつ、契約を取り付けたように私は感じました。
この契約担当者が悪意であったのかどうかはわかりませんが、世の中には悪意をもっている方も少なからずおられます。
悪意の有無にかかわらず、契約を理解できない成年被後見人の契約を白紙にできます。
成年被後見人を社会全体で守っていこうという立法制度です。

これが、私が取消権を行使した最初の事例です。
まぁ、新聞の定期購読の契約なので、大きな金額にはならないのですが、成年後見制度を改めて考察する機会になった、とても印象に残った事例であります。

さて、後見人の取消権行使について、あと2つ程、実際に経験した事例をご紹介したいと思います。
それでは、次回の更新、
本当にあった成年後見人の取消権行使~その2~にて
「事例2」をご紹介いたします。

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