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遺言で配偶者居住権の遺贈があった建物を相続させると記載がある場合

コラム 不動産登記 相続

さて、前回より、配偶者居住権について、実務上、細かい部分の運用が定まってきたものがいくつかありますので、いくつかご紹介しております。
1つが、前回の記事「遺言で配偶者居住権を「遺贈」ではなく「相続させる」旨の記載がある場合」、
2つ目が、今回のコラムの記事「遺言で配偶者居住権の遺贈があった建物を相続させると記載がある場合」、
についてご紹介しております。

さて、「遺言で相続させるとした建物に配偶者居住権の遺贈があった場合」についてです。

以前の記事、
配偶者居住権は2つの遺贈で~後編~、にて、配偶者居住権に関し、

「配偶者居住権が設定された建物の所有権は、完全な所有権ではなく、配偶者居住権の制限を受けている制限付き所有権」になるところ、「制限付きの建物を相続させる、とされた相続人は、完全なる所有権を取得できませんので、「いらない」という選択をするには、相続放棄しか選択がなくなり、他の遺産まで受け取れなくなって」しまうため、「配偶者居住権を遺言で設定する場合、その対象となっている建物の承継も「遺贈」の対象とすることで、相続とは別に、その制限付き建物の承継を個別に拒否できるようにすることができる」ことから、「逆に、遺贈とすることで、その建物に関し制限がある所有権について、承継するかどうかの受遺者側の判断を反映することができるように、遺言を設計すべきなのです。」

ということを述べました。

そもそも上記の論点は、遺言にて、配偶者居住権を遺贈した場合、個別に対象となる建物を「相続させる」ことができることを鑑み、上記の趣旨より、対象建物も遺贈にて処理をして、遺言を設計した方が良い、という趣旨でした。

上記の問題があることから、運用としては、遺言にて、配偶者に配偶者居住権を遺贈した場合で、その他法定相続人に対象の居住建物を相続させる旨の記載がなされた場合、遺言書の全体の記載から、対象建物の相続させるのではなく、これを遺贈の趣旨と解釈することに特段の疑義が生じない限りは、居住建物の所有権のについても遺贈(負担付遺贈)の趣旨であると解釈して取扱いされることになりました。

配偶者居住権を活かせるよう、対象建物の所有権を承継する側にも配慮した、いい運用だと思います。
関係者全員が納得できるような運用ですね。

ですが!!
少しだけ問題が。

その不動産の名義変更の登記について、相続ではなく遺贈による所有権移転の登記をすることになるので、相続登記はと異なり、権利者と義務者の共同申請になります。
つまり、権利者である受遺者、義務者である相続人全員からの登記申請が必要になります。

遺言内容に不満がある相続人の協力が得られない、となれば登記申請ができません。
これは、遺言執行者を就けることによって解決し、遺言執行者のみの申請が可能になります。
ですので、適任者がいれば、遺言に遺言執行者の定めも一緒にしておくべきですね。
もちろん遺言執行者の定めがない場合でも、事後的に、家庭裁判所へ遺言執行者選任の申立を行い、選任することも可能です。

もう1つ大きく問題になるとすれば、死因贈与にて、配偶者居住権が設定され、対象建物を死因贈与した場合でしょう。
これから述べる問題は、配偶者居住権の問題だけではなく、死因贈与の登記申請全体の問題となるのですが、死因贈与は、性質が許す限りは、遺贈の規定が適用されます。
よって、死因贈与による配偶者居住権の設定も可能です。
死因贈与による所有権移転の登記申請は、遺贈と同様に共同申請となり、相続人全員の関与が必要です。
更には、死因贈与契約書が私署証書にて作成された場合、執行者の定めがあったとしても、私署証書契約当時の贈与者の印鑑証明書、または相続人全員の同意が必要になります。
この問題は、死因贈与契約書を公正証書にて作成することで解決します。

逆に言えば、死因贈与契約の締結をお手伝いする場合、不動産が含まれているときは、執行者の定めは絶対に必要で、できるだけ公正証書による契約書作成をお勧めすることになります。契約書に実印を押印してもらい、契約時の印鑑証明書をずっと契約書と一緒にずっと保管頂くことにより解決も可能ですが、紛失等を考えると、公正証書の方が確実です。

配偶者居住権の令和3年4月時点での運用をご紹介致しました。

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