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本当にあった成年後見人の取消権行使~その2~

コラム 成年後見

前回からの記事、
本当にあった成年後見人の取消権行使~序章~
本当にあった成年後見人の取消権行使~その1~
の続きのお話になります。

今回は、「事例2」をご紹介します。

今回ご紹介する事例は、実際には取消権を行使せずに解決しましたが、行使ができていれば、非常に楽に解決した事例です。

独居のBさんは、痴呆症ではあるものの、お一人暮らしで、コミュニケーションも普通に行うことができ、一見、痴呆症と感じることができません。
私も最初は、後見制度の利用の必要があるのだろうか、と思っておりましたが、何度かお会いしているうちに、痴呆症であることを感じ取れ、後見制度利用の必要性を理解することができました。

地域包括センターと連携し、成年後見人選任の申立を準備し、申立を済ませ、審判を待っておりましたところ・・・。

地域包括センターの担当者さんより電話が・・・。

成年後見人B本人のお友達からの情報で、銀行から印鑑証明書を求められている、との連絡が。

Bさんは、コミュニケーションが取れるので、痴呆症とは感じにくいのです。
しかし、医師の診断書や、地域包括センターの日常の関わりから勘案するに、間違いなく痴呆症で、後見制度の利用が必要であるため、申立を進めていたのです。

なんと、Bさんは遺言信託の手続きのため銀行に印鑑証明書を徴求されておりました。

Bさん本人に聞いてみると、何の手続きを進めているのかは理解してません。
具合が悪いことに、まだ審判が出ておらず、成年後見人に選任予定である私にまだ権限がありません。

銀行さんの遺言信託は、銀行報酬が100万円を超えるような高額な契約であることがほとんどです。

とにかく急いで銀行へ電話をしました。
現在、痴呆症で後見相当の医師の診断がでており、成年後見人選任の申立てを済ませている旨、まだ審判が出ていないが私が成年後見人に選任予定である旨、をお話ししました。

すると銀行さんの態度は、要約すると「遺言は本人の意思ですから。契約を進めます。」。

いやいや、痴呆症なんですって!

でもまぁ、銀行さんの言わんとすることもわかります。
成年被後見人でも、医師2名以上の立会などの法律の要件に則って、遺言を残すことができます。
成年被後見人であろうとも、遺言は本人の意思で残すことができるのです。現実のハードルは高いですけどもね。

けれども、本件とは話が違います。
私は声を荒げて言いました。
「銀行さん、確かに遺言は本人の意思で残すことができます。しかし、高齢者と投資信託等の契約をするときに気を付けなければならないことがありますよね。本件も同様だと思います。」
「もし、痴呆症と知りながらこのまま契約を進めた場合、仮に私が成年後見人に選任された場合、遺言の効力は争いません。本人の意思ですから。しかし、銀行さんとの遺言の信託契約は、無効である旨を争います。それでもこのまま契約を進める場合は、まだ成年後見人ではありませんが、申立書を作成した司法書士として、また本人の状態を知る利害関係者として、今回の経緯、特にBさんが痴呆症であり後見開始の申立てを済ませている旨を内容証明で通知させて頂きます。」

少し怒り気味で言ってしまいました。
だって、銀行さん、おかしいでしょ。

銀行さんは「上席と協議します」として電話を切りました。

その後連絡があり、今回は契約しない、とのことでした。

とりあえず、本件はこれでなんとか解決しましたが、その後、成年後見人に選任された私は、後見業務の一環として、Bさんが取引のあるその銀行で色々手続きを行う必要があり、少し気まずい思いをしました。

銀行さんの大きな案件を潰してしまいましたが、本人に理解がない契約を見過ごすわけにはいきませんでした。

今回のケースは、成年後見人に就任する前の出来事ですので、取消権を行使する権限がありませんでしたから、就任後の将来、意思能力なき法律行為として無効を主張する旨を通告することになりました。
銀行さんが引き下がってくれましたので、就任後、当該無効主張をするまでには至りませんでした。
本件が成年後見人就任後の出来事であれば、「取消権を行使します。以上。」、これのみで終了だったのですが。

逆に言えば、今回のケースは、成年後見人の取消権の有用性を身をもって感じた例でございました。

さてさて、次回の更新
本当にあった成年後見人の取消権行使~その3~
で、後見人取消シリーズを最後にしたいと思います。

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